隠岐島前(どうぜん)高校の高校生がイェールNUS大学を訪問しました。

EQパートナーズの高校、大学教育支援の一環として、ユニークな活動をご紹介します。

10月15日、島根県、隠岐島前高校の高校生の皆さんが、ここシンガポールのイェールNUS大学を訪問するという企画がありました。これはただの修学旅行、施設見学ではなく、現役高校生の皆さんが、島の現在抱える社会問題を自分たちで調べ、パワーポイントで資料を作成し、それをイェールNUS大学の現役大学生の皆さんに向けて全て英語でプレゼンテーションし、意見交換をする、という大変ユニークな企画です。

過疎と少子高齢化、若者の島外流出による人口減少に悩む隠岐島、一方で急激な都市化と外国人労働者による人口増加が社会問題化しているシンガポール。同じ島であっても多くの意味で対極にある二つの島同士で、情報交換し、問題の解決策を見出そうという試みです。

島前高校は、日本の多くのメディアでも取り上げられるユニークな教育改革で知られ、離島の小さな高校にも関わらず島外からも多くの生徒が入学してくるという大変面白い高校です。もともとは過疎で学校閉鎖の危機に直面していましたが、この状況をなんとかしようと有志が立ち上げたのが、島前高校魅力化プロジェクト。

ここでプロデューサーをされているのが、岩本悠さんです。 東京都ご出身の岩本さんは、大学時代にアジアとアフリカの国々を旅行し、その経験を本として出版されたご経歴があります。『流学日記~20の国を流れたハタチの学生~』は四万部以上を売り上げ、岩本さんはその印税でアフガニスタンに学校を建設されました。その後就職されたソニーでは、人材育成を担当されていました。

隠岐島との縁は、2006年に「人間力推進プロジェクト」の出前授業の講師として島に招かれたことに始まります。「ぜひ島に移住してわれわれの力になってほしい」と請われ、東京から隠岐への移住を決意されました。それ以降、授業の知識だけでなく人間力もつけ、また世界にも目を向けるという 島前高校の新しい教育プログラムの立役者としてご活躍されています。

隠岐島について説明する岩本さん。

隠岐島について説明する岩本さん。

一方、イェールNUS大学は、米国イェール大学とシンガポール国立大学という東西二つの名門大学の提携により2013年に設立された、シンガポール初のリベラルアーツカレッジです。イェール大学と同様、全寮制で、2年間の一般教養課程の後、14の専攻から選んだ専門課程に進みます。外国人留学生は40%。真に国際的な環境で、世界最高水準の教育が受けられる大学です。

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イェールNUS大学、キャンパス(ハウエルズ撮影)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらの大学にジャパン・ソサエティーという学生サークルがあります。このジャパン・ソサエティには日本人学生、日本語ができる学生、日本に興味がある学生などが所属しています。その部長をされているのが齊藤初雲(ショーン)さんです。今回高校生の受け入れをしてくれたのがこの齊藤さんをはじめとしたジャパン・ソサエティーの皆さんでした。

島前高校の生徒を、将来グローバルに活躍できるような大人にするには・・そんな教育を考えておられた岩本さんに、イェールNUS在学中の齊藤さんを紹介したのがEQパートナーズ東京の安部でした。そんな縁で今回のこの素晴らしい企画が実現することとなりました。

高校生たちは5人のグループにわかれ、各グループで選んだトピックについて発表します。トピックは隠岐島が直面している様々な社会問題です。たとえば、地域のお祭りの参加者が年々減っている。どうすればもっと地域内外から祭りに参加してもらえて、イベントを活性化できるだろうか?

隠岐島は離島であるためにゴミのリサイクルが物理的に難しい。またお年寄りには複雑なリサイクルは面倒でよく分からない。一体どうしたらもっと効果的にゴミのリサイクルをすることができるのか、など。

グループで選んだ問題を皆でリサーチし、パワーポイントでまとめ、それを英語で現役大学生にプレゼンテーションしてくれました。

大学生たちは、高校生たちの、時には分かりにくく、つたない英語を真剣に聞き、そして質疑応答時には次々と挙手して質問やアドバイスをしていました。例えば、隠岐島の米農業の衰退についてのプレゼンテーションに対し、大学生たちからは「日本は科学技術先進国なのに、どうしてまだ米農業があまり機械効率化されていないのか」「シンガポールでは土を使わない人工光、水耕栽培の研究がされ、実用化もされている。隠岐島でも同様にテクノロジーを利用した効率的な農業の可能性は探れないか」など、興味深い意見が次々と出ました。

プレゼンテーションの後は皆で和やかな雰囲気の中、大学の食堂で一同昼食となりました。ここでは高校生と大学生が一緒にテーブルを囲み、シンガポールのローカルフードやパスタ、シチューなど様々な料理が並ぶ学食で各自好きなものを取ってビュッフェスタイルのランチを楽しみました。

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右から齊藤さん、岩本さん、ハウエルズ

その後は大学生によるイェールNUS大学の施設案内ツアーが行われました。最新の設備を完備した体育館や、教室、学生達が集うコモンルームなどを見学しました。また寮の部屋の中も特別に見せてもらいました。

島前高校の校長先生のお話では、島前高校はそのユニークな教育内容に惹かれ島外からも多くの学生が入学してきているため、生徒さんの40%近くが寮生活をしているのだそうです。そのため、同じ寮生として熱心に案内をする大学生の話を聞いている生徒さんが目立ちました。

今回初めて訪問しましたが、イェールNUS大学は施設も雰囲気も素晴らしく、また高校生たちを受け入れてくれたジャパン・ソサエティの皆さんは、斉藤さんを始めとして皆アジアの将来のリーダーになるだろうと思われる才能あふれる若者たちでした。

島前高校の高校生の皆さんも英語で頑張ってプレゼンし、大学生とも物怖じせず会話して楽しく交流しており、岩本さんをはじめ関係者の方々の努力と島のユニークな教育改革の成果が既に実を結んでいるのがよく分かりました。

大学生の一人より「君たち隠岐島の高校生が、地元愛を持ってこのプロジェクトに取り組んでいるのがとても素晴らしいと思う。」という言葉がありましたが、本当にそうだと思いました。引率の先生方の表情が誇らしげだったのがとても印象に残りました。

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