【コラム】「経営スキルと経営哲学について」

多くの企業におけるリーダー・マネジャー教育や大学院ビジネススクール(MBA)などでは、
経営の知識、スキルの向上を中心とした教育が行われています。
例えば、経営戦略やマーケティング、アカウンティングやファイナンス、リーダーシップなどのいわゆる経営知識を教え、それに関するケーススタディを繰り返しています。
しかしながら、すべての根幹となる経営哲学というものについては、あまり教育がなされていないようです。

ヒューレット・パッカード(HP)社は、かつて、ジム・コリンズ著『ビジョナリー・カンパニー1』の中で、“ビジョナリーな企業”として賞賛されました。しかし、その後刊行された『ビジョナリー・カンパニー3』では、“衰退する企業”とされてしまいました。
その差は、かつては「HPウェイ」という経営哲学(他社の真似をしない新製品による市場拡大や、従業員に対する深い信頼関係を中心とした経営を行う)を維持していたのに、後にそうではなくなったことによって生じたと考えられます。

また、JALのケースでは、経営破たん(2010年1月 会社更生法を適用)以前と以後(2012年9月 東京証券取引所に再上場)で、同じ航空事業を行なっており、
戦略的には大きな変更はあまり見られないにもかかわらず、業績が回復したのは、
「JALフィロソフィー」という経営哲学をまとめ、全社員に浸透させたことが大きな一因であると言われています。

経営知識やスキル教育だけではなく、経営やビジネスの根底となる経営哲学に関する教育や
経営理念の共有が、事業本来の意義や考え方を経営トップだけでなくミドルや現場のスタッフに
いたるまでが理解して実践することにつながり、ビジョナリー・カンパニーを作り上げていくように思います。

(EQパートナーズ株式会社 代表・立教大学大学院教授 安部哲也)

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