今期の立教大学大学院 MBA リーダーシップ論の授業にて、元 日本HP(ヒューレット・パッカード)社社長の甲谷勝人様に、ゲスト講演者としてご講演をいただきました。甲谷氏は、HP創業者のヒューレット氏とパッカード氏とも仕事をされた方です。
開口一番「”HPウェイ”が、半袖を着てやって来ました!」と挨拶されたことにMBA生は皆驚き、圧倒されました。「経営理念、いわゆる”WAY”は重要である」という言葉はよく耳にしますが、ここまで言い切ることのできる経営者・リーダーは少ないのではないでしょうか。
”HPウェイ”とは「人間は男女を問わず、良い仕事、創造的な仕事をやりたいと願っていて、それにふさわしい環境に置かれれば、誰でもそうするものだという信念に基いた方針であり、行動規範だと言えます。」と甲谷氏が説明したように、1957年に明文化された”人間尊重”の企業理念です。
この”HPウェイ”を、経営者のみならず、マネージャー層、そしてスタッフが信じ、愚直に実践したことが、HPが世界的企業に発展した大きな要因であるとのことでした。
そしてジム・コリンズ氏著の『ビジョナリカンパニー1』(1994年)では、HP社はビジョナリーな企業として称賛されました。
しかしながら、2009年に出された『ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階』では、HP社は逆に衰退企業として取り上げられました。経営陣の交代などで”HPウェイ”の企業文化が薄れ、短期的な利益追求を求め、
1)成功から生まれる傲慢
2)規律なき拡大路線
3)リスクと問題の否認
4)一発逆転策の追及
5)屈服と凡庸な企業への転落
といった”衰退の5段階”をたどったからです。
このことから学べることは下記です。
1)”HPウェイ”のような経営理念が企業文化として浸透した会社は強いこと
2)ビジョナリーカンパニーといえども、その成功に慢心したり、守るべき企業理念や文化が薄れてしまうと、衰退の段階に入っていくこと
2016年6月29日の日経新聞では、「出光興産と昭和シェルの合併に関して、出光創業家が、企業文化の違いを理由に合併には反対している」という記事も出ていました。
このことは、企業・組織文化が、経営戦略などと同様にいかに企業経営に重要であるかという表れではないでしょうか。
「皆さんの企業の企業・組織文化を表現するとどのようなものでしょうか?」
また「経営者、管理者層、社員層にどのくらい共有されているでしょうか?」
EQパートナーズ株式会社 代表取締役
立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科(MBA) 特任教授 安部哲也