【講演レポート】ヤマトホールディングス木川眞 氏 「日本の成長戦略に貢献するヤマトグループ“バリューネットワーキング”構想」

EQパートナーズ代表の安部哲也です。
安部哲也

2014年6月10日東京にて行われた
ヤマトホールディングス 木川眞代表取締役社長の講演をレポートします。

演題 「日本の成長戦略に貢献するヤマトグループ “バリューネットワーキング”構想」
 (by ヤマトホールディングス 木川代表取締役社長 2014年6月10日 東京にて)

【講演内容】
・木川氏は2005年、(みずほ)銀行からヤマトに移り、開放感を感じた。
 銀行は金融庁からの規制でがんじがらめだったが、それに比べると運輸業は縛りが少なかった。

・成長している企業とは?
① 理念、企業風土がしっかりしている
② 社員力:社員がいきいきとしている
③ 戦略力:思い切った成長戦略を大胆、タイムリーにとれている

・ヤマト運輸について
 1919年、日本最古のトラック輸送業。東京 銀座にて。
 創業者 小倉康臣氏(昌男氏の父)。
 現在、社員数 19.3万人。2014年末までに20万人へ。典型的な労働集約産業。宅急便16億個。 
・当初、貸し切り運輸事業だった。主要顧客は三越。
 三越 岡田事件のころ、ヤマトより取引を打ち切った。

・第1のイノベーション:1929年 創業 10年目 路線事業を行った。
 西濃、福山、日通など資本力のある運輸会社に負けていった。関東のみ。倒産の危機。

・第2のイノベーション: 宅急便 by 小倉昌男氏。
 当時、荷物輸送は、郵便+国鉄。
 小倉氏は、ばくちを打つ人ではなく、ロジカルに緻密に事業を考える人であった。
 経営幹部はほとんどが反対。 同業者「ヤマトはつぶれる」。
 すごい勢いで伸びていき、5年で損益分岐点を超えた。他社が次々に参入。
 小倉氏はオンリー1の事業を立ち上げながら、(他社の参入のあと)次々にスキー・ゴルフ宅急便、
 時間帯指定、産地直送などの新しいサービスを付加していった。常に消費者視点。
 価格だては、「サービスが先、利益は後」。利益の先取りはしない。
 ヤマトは、通信販売などにより日本の食文化を変えた。

・第3のイノベーション 
 内需産業であり、少子高齢化の先には、事業は発展しない。
・100年の「DAN-TOTSU 経営計画2019」(3か年計画 × 3回)
 ステークホルダー「株主、顧客、社員、社会」の満足度の総和を最大化する。
 コアコンピタンス=IT(情報),LT(物流),FT(金融)
・当初は事業拡大のためのグローバル化を考えたが、日本国内ユーザーの満足度を満たすためには、
 海外も必要。グローバル化ではなく、ボーダーレス化。
 (以前、UPSと提携をしたが、風土が合わずに提携を解消した。)
・グローバル化 + 地域密着。
・ターゲットはRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership東アジア地域包括的経済連携):
 アセアン10か国+オーストラリア,中国,インド,日本国,韓国,ニュージーランド。人口30億人。
・バリューネットワーキング構想(物流改革)
 物流に、コストではない、価値を創造。
 国内ゲートウェイ :国内 当日配達へ。
 2013年9月 羽田クロノゲート。
 沖縄物流ハブ:アジアへ翌日配達。アジアでクール宅急便も実現。
 アジアでも宅急便事業。
 5つのエンジン:
 ① “止めない物流”   ② “クラウド型ネットワーク(FRAPS)”  ③ 国際クール宅急便
 ④ 物流の見える化   ⑤ デマンドチェーン視点
 “スピード × 品質 × コスト”
キーポイント:
(1) 物流のボーダーレス化(グローバル化)
(2) Eコマースの拡大・加速
(3) 労働力人口の減少
 ・地域活性化 “プロジュクト G”
  “小倉イズム”は守らないといけないが、小倉氏の作ったしくみは変える必要がある。
例)小倉氏がやめたB TO Bビジネスを再開する。(パナソニック家電の修理サービス等)
  例)岩手県での生活支援サービスのトライアル
    一部補助金を使うが、基本的に補助金を使わない。
    補助金がなくなったからやめるというわけにはいかない。
  *CSV(Creating Shared Value:by ハーバード大学 マイケル・ポーター教授) の実現。 
   社会のニーズを本業の中で実現する。施しのみではなく、利益も得る。

・社訓:
1. ヤマトは我なり: “全員経営”
1. 運送行為は委託者の意思の延長と知るべし: “サービスが先、利益は後”
1. 思想を堅実に、礼節を重んずべし: “コンプライアンス”
 社訓もしくは理念はどこの企業でも持っているが、社員が本気で実現できるかどうかが問題。
 スキー宅急便で、大雪でスキーを届けられなかったとき、
 小倉氏はスキーやウェアを買って、提供した。⇒ 「サービスが先、利益は後」という理念を本気で実現した。
 東日本大震災において利益の40%にあたる額(宅急便1個につき、10円)を寄付した。
 腹をくくる時、いざという時に、どうできるかが問題。
・以前、ヤマトはほめない文化であったが、ほめる文化つくりへ。ほめられて嫌な社員はいない。
 人も変わってきた(叱られるとダメになる人も増えてきた)。
 顧客からほめられたこと、社員同士でほめた・ほめられたこと(記名式)をイントラネットで共有。
 ポイントをためる。上位者を集め、表彰している。たいへん喜んでいる。
 小倉氏は、イノベーションを戦略的におこしながら、泥臭い人の面を重視してきた。

【質疑応答】
Q)企業経営者のあるべき姿は?
A)既成概念にとらわれずに何ができるかをロジカルに考えられること。ニーズがあるかどうかを見極め 
 られること。成長のためにはどこかにジャンプしないといけないが、独りよがりの判断ではいけない。  
 プッシュ型ではなく、プル型(お客様が求める)でなければならない。

Q)世の中にないもの(オンリーワン商品)の市場規模はどう推定するのか?
A)「そのマーケットの市場規模は?」「どのくらいシェアをとるのか?」
 オンリーワンの商品:市場規模を絞り込む。走りながら派生商品を作り上げる。
 “オンリーワン性 + 実際のニーズ + 売れる価格だて”
 認定事業 現在 60 ⇒ 100としたい。

Q)どのように新サービスを生み出すのか?
A)まごころ宅急便、“見守りサービス”は現場の女性社員が発案。
 配達先の人が自分が配達した日に、亡くなっていたことにショックを受け、
 宅急便+見守りサービスを提案、実現した。
 (一旦中断したが再提言し、ホールディングスで実現。)プル型サービス+オンリーワン。

Q)銀行員からの転身で、どのようにヤマトにおいて仕事を覚えていったか?
A)社外から見ていたヤマトと社内で見たヤマトにほとんど変わりがなかった。
 社外から来た強みとして、「変える」ことを期待されていた。
 子会社を多くつくり、社長を経験させようとした。
 全国主要拠点 約70か所(現場)を回った。「はじめて社長が来た!」と喜ばれた。サインを求める者もいた。 

Q)仕事のありかた。ルールについて。
A)ヤマトの仕事はドアを開けてくれる玄関口まで。
マニュアル化しすぎない。例)東日本震災の時、現場が勝手にトラックを使い、ボランティア活動。
基本ルールはあるが、お客様のニーズに合わせ、現場(セールスドライバー)の判断でおこなえる
部分も残す。

Q)競合との関係は?
A)最大の競合 佐川、ジャパンポストなどとも、それぞれの特徴・強みで戦う。
 すべて戦うということではなく、それぞれの特徴をいかして、共存することも多くある。
 例えば、ヤマトと西濃運輸はあるエリアで相手の荷物を運ぶこともしている。  など

【木川眞 氏 経歴】
昭和48年4月 株式会社富士銀行入行
平成16年4月 株式会社みずほコーポレート銀行常務取締役
平成17年4月 ヤマト入社
平成17年6月 常務取締役
平成19年3月 ヤマト運輸株式会社代表取締役社長兼社長執行役員
平成23年4月 ヤマトホールディングス株式会社 代表取締役社長兼社長執行役員  現在に至る

【まとめ・所感】
・ヤマトは、戦略・ロジックと、現場視点・人間重視の両面をうまく持ち合わせている企業文化を持っている。
その双方のバランスが良い。片方だけでは強いヤマトはできないであろう。
・また、イノベーションに関して、長期的で論理的な高く広い視点によるトップダウンの部分と、
現場感覚や社員の気持ち・感情重視のボトムアップの両面が重要であることを認識。
例えば宅急便はトップダウンのイノベーションであるが、上記の“まごころ宅急便”は、
現場のボトムアップによるイノベーションである。
特にボトムアップのイノベーションを成功させるためには、
 イノベーション、チャレンジを容認するトップの意向、組織風土つくりが重要。
・さらに「サービスが先、利益は後」という理念とそれを本気で実現していることに感銘を受けた。
 CSV 経営の一例である。

以上

(記:安部哲也 EQパートナーズ代表)
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