2015年2月12日、EQパートナーズではシンガポール国立大学 ビジネススクール パーシャ教授をお招きして新春特別講座を開催いたしました。今回はその内容をダイジェスト版でお伝えいたします。
パーシャ教授には「アジアにおける戦略」というテーマでご講演頂きました。
・なぜ、先進国と途上国で同時に成功するのが難しいのか
・ユニークな企業ケース紹介
上記2点に絞り、ご講演頂きました。
■ 経済の中心が先進国から新興国にシフトする
OECD開発センターによれば2050年にはミドルクラスの50%以上が中国とインドで占められると予想されています。“ もし、中国・インドなどにシェアを持っていなかったら、あなたの会社はどうなっているでしょうか ”
これから、ミドルクラスの消費の中心が欧米から中国・インドをはじめとするアジアへとシフトします。
1ドル100円とした場合、年収30万円であり、これは日本・米国・ドイツなどにおけるミドルクラスの10分の1です。
また、国によってミドルクラスの定義は異なるものの、家を買ったり、子供の教育資金が必要になったりと、これから大きな消費を控えているステージにある人々です。
(ここでは、年収3000ドル以上をミドルクラスと定義しています。)
■人口の急増とそれがもたらす問題
(雑踏の街角写真を示しながら。) “ここがどこだかわかりますか? ”
バングラデシュの首都 ダッカです。
人口密度の世界ランキングをのぞいてみると
1位: ダッカ(バングラデシュ)2位:ムンバイ(インド) 3位:スーラット(インド) 4位:チッタゴン(バングラデシュ) 5位:香港(中国)となっており、
発展途上国における人口の爆発が顕著であることが分かります。
これらの地域では、水が不足し、食糧が不足し、電力が不足しています。また、道路は渋滞しています。
人口の急激な増加によって、リソースは不足し、インフラの利用も限界に達しているのです。
このような新興国の状況も理解した上で、企業は商品・サービスを設計・提供する必要があります。
■Able to buy & Willing to buy(買えるかどうか & 買いたいと思うかどうか)
[ VTR:米国GE(General Electric) インドの農村地域における医療機器事例]
VTR内容:GEはインドの農村地域向けに医療機器を開発しました。GEはインドの収入に合わせ、10分の1の価格で医療機器を販売し成功しました。
“収入が10分の1の顧客に、10分の1の価格で売るとして、品質も10分の1で良いのでしょうか”
こういった地域では、病院の無い地域を医師が往診します。したがって、機材はポータブルである必要があります。
一方で、多くの機能がついている必要はありません。使う機能だけあればよく、求められているのはシンプルなものです。
品質も10分の1にするのではなく、必要な機能だけに絞ることで、10分の1の価格で実現しています。
つまり、「買える価格 ⇒ 売れる」ではないのです。顧客が買いたいと思うもの (Willing to buy)、必要なものを売る必要があります。
ポイントは以下の2つです。
1.顧客の問題を解決するものであること
2.価値を決めるのは顧客であること(売り手ではない)
■顧客の問題を解決するものであること
かつて、日本の自動車がアメリカで売れたのはなぜでしょうか。それは、燃費性能が優れていたからです。
第二次世界大戦後、資源に乏しい日本において、燃費の良さは、特に必要な性能でした。それがアメリカの消費者にとってもメリットになったのです。
当時の日本人は、顧客の問題を解決するものを生みだしたのです。
■ 価値を決めるのは顧客である。
ハイアールという中国のメーカーでは、洗濯機に関するクレームが寄せられていました。原因を調べたところ、
顧客が洗濯機でジャガイモを洗っていたことがわかりました。もちろん、洗濯機は本来ジャガイモを洗うためのものではありません。
しかし、顧客は、「洗濯機でイモを洗ってはいけません」と教育されることを求めているのでしょうか、それとも「ジャガイモが洗える洗濯機」を求めているのでしょうか。
ハイアールのエンジニアは、「ジャガイモが洗える洗濯機」を作りました。
価値を決めるのは顧客なのです。
■ 顧客とは誰か ~日本のモバイル業界の弱み~
日本企業の例を挙げましょう。この中に、NTTドコモにお勤めの方はいますか。2名いらっしゃいますね。
では、NECはどうでしょう。富士通はどうでしょうか。
メーカーはパートナーに特化した携帯電話を開発します。したがって、もし、1社(顧客)の業績が悪くなれば、パートナーも大きな影響を受けます。
これは、特定のパートナーに最適化することのリスクを物語っています。
■ 10ドルの携帯電話 ~インドのエンジニアの強み~
サムスンのインドの例を挙げましょう。顧客が求めていたのは10ドルで買える携帯電話でした。
先進国企業が売ろうとするオーバースペックで価格の高すぎる端末ではありません。
果たして10ドルで作ることができるでしょうか。
韓国のエンジニアの答えはNOでした。一方、インドのエンジニアの答えはYESでした。
「経験がない」、「プライドがない」ことが強みになることがあります。
韓国のエンジニアは「10ドルで作れるものならとっくに作っている」と考え、だれも挑戦しませんでした。
インドのエンジニアは経験がないからこそ、とりあえず「やってみよう」と挑戦することができました。
いくつか例を挙げましたが、このように、先進国でうまくいった方法をそのまま途上国に適用してもうまくいかないのです。
■ Five Star モデル
それでは、アジアにおける戦略はどのように構築すれば良いでしょうか。
[ 画像 : Five Star Model]
- Strategy
まず、戦略です。
アジアでビジネスを拡大するような戦略は多くの場合、同様の戦略となります。
- People, Skills
その戦略を実行するのは誰でしょうかCEOなどの経営者でしょうか。
違います、実際にビジネスを実行する社員たちです。
現地でビジネスを行うには、現地語を話し、現地のビジネスをよく理解した社員が不可欠となります。
3.Process
そして、適切なプロセスでビジネスを行う必要があります。
4.Structure
次に、適切な組織を構築することです。
5.Incentive
そして、適切なインセンティブを与えることです。
アジアで働くことが、従業員の将来のキャリアにとってマイナスにならないようにすることも必要です。
5つのどれが重要か、どこに課題があるかは企業によって異なります。
大切なことはこれら5つの方向性がそろっていることです。
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今回は「アジアにおける戦略」のダイジェスト版をご講演頂きました。
EQパートナーズでは下記 シンガポール国立大学(NUS) 公開コースをご紹介しております。
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