私が主催する私塾「志塾(こころざしじゅく)」の第60回では、渋沢栄一氏(1840年-1931年)について学びました。
渋沢栄一氏は明治、大正、昭和にかけ、第一国立銀行(現みずほ銀行)を初めとして株式会社組織による企業の創設・育成に力を入れ、また「道徳経済合一説」を説き、王子製紙、帝国ホテル、東京ガスなど約500もの企業に関わりました。
東京証券取引所、東京商工会議所、一橋大学などをはじめとする教育機関・社会公共事業の支援並びに日米関係の構築などの民間外交に尽力しました。
今回は渋沢栄一氏の「和魂洋才」のリーダーシップを下記のように分析しました。
《和魂の要素》
1)論語を基軸とした経営
経営、ビジネスにおける基軸として、論語を学び、その論語の精神から一歩も出ずに、企業経営を行ってきた。
2)志・使命感
当時身分の低かった商業の立場を高め、国の基盤として発展させようとした。
1923年の関東大震災においては、当時83歳であり、まわりからの反対がありながらも、「この年まで生かされているのは、このような場で活躍するためである」と言い、先頭に立ち、復興を先導した。
3)忍耐強さと寛大さ
自ら設立した王子製紙の経営を他者に乗取られようとした際にも、会社のことを考え、潔くその職を辞した。出資の協力などのために他者に何度も頭を下げ、協力を要請していた。
《洋才の要素》
1)新しいもの、効率的なものへの好奇心と柔軟性
1867年、初めて行ったフランスで、その近代化のすごさを目の当たりにし、即座にちょんまげを切り、欧州の経済・企業・社会インフラなどについて徹底的に学んでいった。(その渋沢氏の写真に対し「情けない姿となって」と書いた奥様の手紙が残されています。)
2)スピード経営
当時進んだ欧州の経営・ビジネスの仕組み、インフラなどを次々と取り入れていった。株式会社制度、証券取引所 など。
3)管理会計の手法の実践・数々の企業経営
生涯で500社以上の企業に関わったが「同時に経営の面倒を見られるのは30社まで」と言っていた。(一人で同時期に30社の経営を面倒見ることも並大抵ではありませんが。方法としては、自分の事務所にて、各社の経営者と1時間ごとに面談を行い、各社の会計書類を参考にしながら、現状・問題点を聞き、次々とアドバイスを行うという面談を行っていたようです。)
渋沢栄一氏は、その91才の生涯において、前述のように500社を超える企業や団体の設立に関わった、実にスケールの大きい人物ではありますが、上記のような「和魂洋才」のリーダーシップを参考に、私たちにも実践できることがあるのではないかと思います。
*東京都北区王子の渋沢栄一史料館は、開館時間内に自由に見学できます。
http://www.shibusawa.or.jp/index.html
(EQパートナーズ 代表 安部 哲也)